映画『羅生門』
公開 | 1950年 |
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上映時間 | 88分 |
監督 | 黒澤明 |
原作 | 芥川龍之介『藪の中』 |
出演 | 三船敏郎、森雅之、京マチ子、志村喬etc. |
評価 | 第12回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。 第24回アカデミー賞で名誉賞(現在の国際長編映画賞)を受賞。 本作の受賞が、日本映画が国際市場に進出する契機となった。 |
「羅生門効果(Rashomon Effect)」とは?
「羅生門効果」とは、映画『羅生門』において、殺人事件の目撃者4人がそれぞれ矛盾した証言をする演出から名付けられました。
また、「Rashomon Effect」という名称で海外でも使用されています。
この用語は、「ある出来事の動機・過程・報告について、解釈や証拠に関する意見の相違、人間の知覚・記憶・報告における主観性と客観性の対比の発生」を扱います。
現代の学術的な文脈では「複雑で曖昧な状況を理解するために必要な認識論の枠組み(すなわち思考・知見・記憶の方法)の名称」と定義されています。
長々と小難しい言葉を並べましたが、”訴訟”を思い浮かべると分かりやすいです。訴訟では、両者とも自分が有利になるような情報を出し合います。しかし、それらは主観的な情報で、矛盾が生じていき真実が見えなくなります。このような事象のことを指しているのだと思います。
映画はもちろん、小説でもよく耳にする「信頼できない語り手」という用語にも似ています。
「羅生門効果」を使った主な映画
※独断と偏見で選抜した映画のみ紹介しています。
『情婦』(1957)
アガサ・クリスティ著『検察側の証人』が原作。
未亡人殺しの容疑者の男と、唯一の証人の女を巡る法廷ミステリー。
アカデミー作品賞など、6部門にノミネート。
ゴールデングローブ助演女優賞を受賞。
『暴行』(1964)
『羅生門』を忠実に翻案した、アメリカ西部で展開するミステリアスな人間ドラマ。
まさにアメリカ版『羅生門』。
『ユージュアル・サスペクツ』(1995)
どんでん返しと言えばこれ!な本作。
回想を効果的に用いた脚本で、謎多き事件を描いた作品。アカデミー脚本賞、助演男優賞(ケヴィン・スペイシー)を受賞。
『戦火の勇気』(1996)
ハリウッドが初めて湾岸戦争をテーマにした、“戦場における本当の勇気とは何か”を問うヒューマン・ドラマ。
出演はデンゼル・ワシントン、メグ・ライアンなど。
『スネーク・アイズ』(1998)
ニコラス・ケイジ主演のサスペンス映画。
1万4,000人の観衆が集まるボクシングのタイトルマッチの最中、国防長官が暗殺される。現場にいた汚職刑事リックは捜査を進めるうち、巨大な陰謀が仕組まれていることに気付く。
『ゴースト・ドッグ』(1999)
ジム・ジャームッシュが監督を務めた、アメリカ・ドイツ・フランス・日本の合作映画。音楽をウータン・クランのRZAが担当。
武士道精神を説いた書物「葉隠」を愛読するNYの殺し屋ゴースト・ドッグと、年老いたイタリア系マフィアとの対立を描く。
『HERO』(2002)
中国のアクション映画。2004年にアメリカで上映され、豪華なキャスト、美しい色彩が話題を呼び、中国映画の興行成績を塗り替えた。
主演にジェット・リー、その刺客にトニー・レオン、ドニー・イェン、チャン・ツィイーなど。
『閉ざされた森』(2003)
7人のレンジャー部隊が密林での訓練中に消息を絶つ。しかし、関係者が証言するにつれ、事態は次々に新たな様相を見せる。いったい何が起きたのか。最後に予想外の真相が判明する。
出演はジョン・トラボルタ、サミュエル・L・ジャクソンなど。
『エレファント』(2003)
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のガス・ヴァン・サント監督作。第56回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールと監督賞を受賞。
1999年に起きたコロンバイン高校銃乱射事件がテーマ。
プロの役者は3人のみで、生徒役は実際の高校生。
セリフや役には、彼らの実際の体験や生活が反映されており、役名も彼らの本名。
また、セリフは台本ではないため、描写にリアル感を生み出している。
『バンテージ・ポイント』(2008)
スペインでの国際会議で起こった米大統領狙撃事件の瞬間とその前後を、同時刻に現場にいた8人の視点から描いた、サスペンス映画。
『告白』(2010)
湊かなえによる同名ミステリー小説が原作。
第34回日本アカデミー賞で最優秀作品賞・監督賞・脚本賞・編集賞を受賞。
ある中学校の1年B組の担任(松たか子)の、「私の娘は、このクラスの生徒に殺されました。」という衝撃の”告白”から始まる。
『ロスト・ボディ』(2012)
死体安置所から消えた女性の死体の謎を巡る、スペイン産ミステリー。
オリオル・パウロ監督・脚本。
『プリデスティネーション』(2014)
イーサン・ホーク主演のSF映画。
タイムスリップを繰り返し、自身に関する衝撃の事実を知る。
『ゴーン・ガール』(2014)
脚本も担当したギリアン・フリンの同名小説が原作。
監督は、『セブン』や『ファイト・クラブ』のデヴィッド・フィンチャー。
妻の失踪をきっかけに、関与を疑われた夫に注目が集まり、意外な事実が暴かれていく。
『有罪/Guilty』(2015)
2008年にインドで起こった、未解決の殺人事件を基に製作されたボリウッド映画。
10代の少女が死体で見つかり、翌日にはその家の使用人の死体が見つかる。警察は見当違いの捜査や尋問の末、ある人物を容疑者とするが…。
『お嬢さん』(2016)
令嬢と、その財産を奪おうとする詐欺師の男、女中として詐欺を手伝う女の心境の変化とその裏側を描いたパク・チャヌク監督作。
『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(2016)
密室殺人の容疑者とその弁護人が「悪魔の証明」(=存在しない事実の証明)をし、無罪を勝ち取ろうとするスペイン映画。
『ロスト・ボディ』と同じく、オリオル・パウロ監督・脚本。
『最後の決闘裁判』(2021)
リドリー・スコットが監督、幼馴染のベン・アフレックとマット・デイモンが共同脚本を務めた豪華な本作。
中世のフランス、騎士カルージュの妻マルグリットは、夫の親友ジャック・ル・グリに強姦されたと訴える。裁判で判決を決めることは難しく、カルージュは決闘での決着を直訴し、2人は決闘裁判に臨む。