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映画についての素人の戯言

【消えない過去】強烈な社会風刺をエンタメに昇華『アンテベラム』

作品情報

『アンテベラム』(原題:Antebellum)

公開 2020年
上映時間 105分
監督、脚本 ジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ
製作 ショーン・マッキトリック他
出演 ジャネール・モネイ、エリック・ラング、ジェナ・マローン、ジャック・ヒューストン他
評価 公開初週、Amazon Prime Videoでは映画とTV合わせてレンタル数1位、Apple TVでは映画で1位、Google Playでは3位となった。
2週目は、Amazon Prime Videoの映画で1位、Google Playでは2位、Apple TVでは6位となり、3週目もほとんどのプラットフォームでトップ3を維持した。

あらすじ

南北戦争前夜、南部のプランテーションで奴隷として過酷な労働を強いられているエデン。

一方、話は現代に変わり、社会学の第一人者で人気作家でもあるヴェロニカは、優しい夫と愛くるしい娘と幸せな家庭を築いていた。
ある日、講演会で力強いスピーチを披露し拍手喝采を浴びる。しかし、友人とのディナーを楽しんだ直後、彼女の日常は突然崩壊し、究極の悪夢へと反転する—

感想

同じ俳優が演じる、南北戦争時代のエデンと現代のヴェロニカ。
これらが交錯していくのは誰もが分かることですが、肝心なのはその後の展開をどうしていくのか。かなり期待値が高まっていました。

いやぁ、凄まじい内容でした。社会風刺をガッツリ利かせつつ、エンタメ性もしっかりあってかなり観やすかったです。
全て分かった後で思い返すと、かなり胸が詰まる内容でした。

2回目の過去に転換した時点で全て分かってしまうのが、個人的には惜しい点でした。
あと、ポスターが完全に『羊たちの沈黙』でしたw

雑記

ヒット作を連発のプロデューサー

本作のプロデューサーを務めたショーン・マッキトリックは、アカデミー作品賞候補となった『ゲット・アウト』『ブラック・クランズマン』や、一度では理解できない複雑なストーリーでカルト的人気を得た『ドニー・ダーコ』、批評家から絶賛された『アス』などの製作で知られる。

散りばめられた伏線

ネタバレを読む

本作は、時系列でミスリードをしていて伏線もいくつかありました。

分かりやすいところでは、「BD」のマーク。最初に登場したのは、エデンの背中に押された焼き印。その後現代では、エリザベスが付けていた「BD」のバッジが、これでもかというほどアップで映る。極め付きは、「ブレイク・デントンの再選を!」という看板。この何気ない看板の日本語訳が、わざわざ字幕に出てきたのは不自然。つまり「BD」とは、白人至上主義の議員ブレイク・デントンのことだった。

また、2回目の過去に転換したシーン(1:11:10頃)では、平気で携帯を使っている。このシーンで、作品の構造を完全に把握することが出来てしまう。