映画好きのドグマ

映画についての素人の戯言

【美しき狂気】社会に溶け込むシリアルキラー『ハンニバル』

作品情報

ハンニバル』(原題:Hannnibal)

公開 2015年
シーズン数 3
エピソード数 40分×13話
製作総指揮 ブライアン・フラー他
脚本 ブライアン・フラー他
原作 トマス・ハリスレッド・ドラゴン
出演 ヒュー・ダンシーマッツ・ミケルセンローレンス・フィッシュバーン、カロリン・ダヴァーナス、ヘティエンヌ・パーク、ジリアン・アンダーソン
評価 全シーズン合計、第40~43回サターン賞テレビ部門で16ノミネートされ、地上波テレビ賞男優賞マッツ・ミケルセンヒュー・ダンシー)など7部門を受賞。

あらすじ

連続殺人事件を捜査することになったウィル・グレアムは、自閉症スペクトラムの一種として、あらゆる犯人に共感し、その動機や犯行当時の感情を再現できるという能力を持つ。

高名な精神科医でありながら、人喰い殺人鬼でもあるハンニバル・レクターは、能力に悩まされるウィルの精神状態を診ながら、次第に捜査に協力することに―

感想

<S1>

ハンニバルが実際に手を下すシーンは2回ほど。

毎回違うテーマがある、惨殺死体たち。
中でも、死体のトーテムポールは圧巻でした。

ウィルがジャックに、こき使われてるのが少し嫌でした。
次シーズンがかなり気になる終わり方!

<S2>

バッチバチに、ウィルvsハンニバル

最終回は、怒涛の展開であっという間でした。
今シーズンも、続きが気になる終わり方です。

狂気や悪意を表現する演出として、全身真っ黒の鹿人間が出てきます。
これはかなり印象的でした。

<S3>

個人的に好きなジャンルで、飽きることなく最後まで面白かったです。

シーズン2最終回の後、誰が生き残って誰が死んだのか、最初は見せてくれない演出がいやらしかったですw。

殺人鬼ハンニバルが魅力的なので、感情移入してしまい、頑張ってほしい時と負けてほしい時があります。

vs.レッド・ドラゴンのシーンは特に良かったです。
ラストのべデリア博士は、ハンニバルよりヤバいことに…。

見どころ

マッツ・ミケルセン

本作の見どころは、何と言ってもまずはマッツ・ミケルセンのご尊顔。

最近では、『ファンタスティック・ビースト』でジョニー・デップが演じていた最強の闇の魔法使い、グリンデルバルドの後任としても話題になりました。
私自身、マッツファンですが、グリンデルバルドに限ってはジョニー・デップの方がハマっていたと思います。グリンデルバルドは、割と情熱的なイメージがあったので、マッツだと雰囲気が冷たすぎる気がしました。

本作では、「北欧の至宝」と呼ばれるのも頷けるほど、彼の魅力が溢れ出ています。男性でも、彼のファンになってしまうと思います。
実は、俳優としてキャリアを始めるまでは、プロのダンサーとして活躍していました。彼の上品さや色気は、そこで培われたのでしょうか。

さらに、なかなか見ることが出来ないマッツの調理シーンや、出来上がった美しい料理にも惹き込まれます。

ウィルとハンニバルの関係

ダブル主演ともいえるウィルとハンニバル。始まりこそ、患者と精神科医という関係ですが、様々な殺人事件を調査していくにつれ、友情、もしくはそれ以上のものが芽生えていきます。

刑事と連続殺人鬼という、交わるはずのない2人の何とも言えない危ない関係には引きつけられるものがあります。

芸術的な死体の数々

本作では、グロテスクながら、美しさを感じる死体がいくつも登場します。この創意工夫を凝らした死体が、強烈なインパクトを植え付けてきます。

背中を剥いで天使の翼に見立てたもの、チェロと人間を融合させたもの、大量の死体を積み上げたトーテムポール、人間を縦に切り分けガラス標本にしたもの(ダミアン・ハースト作品のオマージュ)、死体と桜の木を融合させたもの、何人もの身体を縫い合わせ絵画に見立てたもの等々…。

まさに、「人体を使った芸術作品」だと言わんばかりの独創的な死体たちには、目を奪われてしまいます。
しかも、ウィルの共感能力でそれらの殺害&処理過程を追体験するため、ほぼ全エピソード血まみれです。

加えて、それらの死体はハンニバルによって調理され、食べられる(あるいは、客人に食べさせる)要素もあり、狂気的な表現が徹底されています。

記憶の宮殿

ウィル・グレアムが持つ、犯人と共感できる能力とは別に、ハンニバルには「記憶の宮殿」と呼ばれる能力(記憶術)がある。場所法とも言う。

これは、古代ローマにまで遡る記憶補助の方法で、有名な実践者の一人に、イエズス会宣教師マテオ・リッチがいる。彼は、中国での布教活動の道具として、この記憶術を紹介した。

この記憶術は、「頭の中に宮殿や部屋など想像上の空間を思い浮かべ、その空間の様々な場所に記憶したい情報を配置する」というもの。情報を思い出したい時は、その情報を配置した場所を訪れて、記憶を拾い上げる。
この記憶術では、慣れ親しんだ場所を使うことも可能で、通学路や自宅などを思い浮かべてもよい。

ハンニバルの場合、1,000の部屋がある広大な宮殿を作り上げている。彼は、この宮殿の中を自在に歩き回り、それぞれの部屋を訪ねるだけで過去のどんな記憶も呼び起こすことができる。さらには、その過去の記憶の中で生きることさえできる。さすがにここまでくるとフィクションの話ですが、この設定にはテンションが上がります。

人気ドラマ『シャーロック』でも、ベネディクト・カンバーバッチ演じるホームズが、この記憶術(”マインド・パレス”と呼ばれている)を使っている。

雑記

人気があるも打ち切り

実は、本作は元々7シーズン構想だった。3シーズンで終了したのは、視聴率の低下や、違法ダウンロードが原因だと言われている。

一方で、本作はマッツ・ミケルセンの代表作とされており、続編の制作を模索する声が度々聞かれるなど、根強い人気がある。

ハンニバル御用達のカウンセラー

ハンニバルが通いつめるカウンセリングを担当する精神科医ベデリア・デュ・モーリアは、ドラマ版のオリジナルキャラ。元々は、アンジェラ・ランズベリーが演じる年配の女性の予定だったが、彼女の出演が困難になり、より若い女性に変更されジリアン・アンダーソンがキャスティングされた。

個人的には、ジリアン・アンダーソンの方が、妖艶かつ危険な空気を感じられてよかったと感じました。

エピソードタイトル

S1ではフランス料理、S2では懐石料理、S3ではイタリア料理にちなんだエピソードタイトルが付けられている。