作品情報
『デビルズ・アワー ~3時33分~』(原題:The Devil's Hour)
公開 | 2022年 |
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エピソード数 | 60分×6話 |
監督 | ジョニー・アラン、イザベル・シーブ |
脚本 | トム・モラン |
出演 | ジェシカ・レイン、ピーター・カパルディ他 |
音楽 | ザ・ニュートン・ブラザーズ |
配給 | Amazonスタジオ |
あらすじ
感情を全く示さない息子との関係に困惑するルーシーは、午前3時33分ちょうど、奇妙なビジョンが見えて目が覚めてしまう不可解な現象にも苦しんでいた。
そんな中発生した残虐な連続殺人事件の捜査に巻き込まれるにつれ、彼女が見るビジョン、何年も前の失踪事件、息子の真相など全ての答えが明らかになっていく—
登場人物/キャスト
○ルーシー・チェンバーズ/ジェシカ・レイン
- ソーシャルワーカー
- 毎晩3時33分に、奇妙なビジョンにうなさている
○ギデオン・シェファード/ピーター・カパルディ
- 数々の事件で追われる犯罪者
○ラヴィ・ディロン/ニケシュ・パテル
- 刑事
- 殺人事件を追ううちに、ルーシーに辿り着く
- ルーシーとマイクの息子
- 感情を一切表に出さない
○マイク・スティーブンズ/フィル・ダンスター
- 息子アイザックを気味悪がり、愛せないでいる
○シルビア・チェンバーズ/バーバラ・マーテン
○ニック・ホルネス/アレックス・ファーンズ
- ラヴィの相棒の刑事
感想
「ビジョンで見えたことが、現実で起こる」という設定から、パラレルワールド?タイムリープ?幽霊?未来予知?など、様々な予想をしながら観るのがとても面白かったです。
自分もデジャヴがよくあるので、親近感がわきました。
”何が”とは言えませんが、ジョニー・アラン演じる白髪のおっさんの精神力がハンパじゃない。
様々な疑問が全て明かされるのは最終話です。真相が分かった後は見返したくなったし、個人的には納得できる内容で面白かったです。
ただ、最終話までの前置きが長く、訳が分からないまま淡々と物語が進みます。
そのため、飽きてきたり、長く感じる人はいると思います。
なんちゅう終わり方や!アイザックー!
雑記 ※ネタバレ注意
核となる設定
本作の肝は、同じ肉体で同じ人生を繰り返し歩む「回帰」という現象。
と言っても、前の人生と違う行動を起こすことで、自分や他者の来世を変えることが可能。
SF強めの設定ですが、詰めが甘いことはなく、すんなり納得できました。実は全員が同じ人生を繰り返しているが、それを記憶している人は一握りであると明言することで、すっきりとしていて理解しやすいです。
ルーシーの人生
大前提として、シルビアが自殺し、ルーシーが刑事になることは確定している。
それは、ギデオンがシルビアの自殺を阻止したことで、特異な存在アイザックが生まれたことから明らか。
彼女が毎晩うなされていた”3時33分”という時間は、母シルビアが自殺するはずだった時間。
シーズン1の時点で、前世と繋がれるのは、死ぬはずだった時点よりも長生きした人だけ(エブリンやシルビア)。この設定を考慮すると、ルーシーがなぜ前世のビジョンを見ることができたのか疑問です。ギデオンのように、ルーシーは自ら”人生の仕組み”に気づく力を持っているということか?
ルーシーは刑事として、ラヴィより優れていると考えます。実際、ソーシャルワーカーになったルーシーですら、ギデオンの逮捕にかなり貢献しました。
最終話の取調室のシーンで、ギデオンは「必ず同じ刑事に見つかる。」と発言。これは、ラヴィではなくルーシーのこと。つまり、
- ルーシーが刑事になる⇒ギデオンは捕まる
という流れは確定していると思われます(ソーシャルワーカーになった世界でも捕まっていますが)。
最終話、ルーシーはアイザックを助けるため、火事で燃え盛る家の中に飛び込む。そこにアイザックの姿はなく(別の世界に移動した?)、ウォレン家の家族写真やペガサス柄の壁紙が映る。つまり、ルーシーも別の世界に移動した?どちらにせよ、この世界のルーシーは死亡する。
シーンは別の人生に移り、ルーシーは再び刑事に(刑事になったということは、シルビアは自殺した?)。ギデオンを逮捕し、同じような火事からウォレン一家を救っている。また、ルーシーが取調室で煙にむせている描写から、この世界はアイザックを助けに行った世界より後だと分かる。
シーズン2では、この世界に移動して来たアイザックに再会するのではないか、と考えています。
謎に包まれたギデオン
ギデオンは、これまで何度も死んだことがあり、生まれ変わっても前世の記憶を持っていた。
言い換えると、自分が経験したことに関して未来予知ができるとも言える。彼いわく、全ての人間が同じように生と死を繰り返していて、それぞれの人生は螺旋状に接し合っている。しかし、多くの人は前世の記憶がないので、次の人生でも同じ行動をとる。
つまり、ギデオンのような特異体質が1人もいなければ、世界は全く同じことの繰り返しになるというわけ。
ギデオンはある時点で、父親に殺されることの記憶に成功。次の人生で、事前に父親を殺すことで生き延びる。これを発端として、積極的に「転生」していくようになる。
その後は、悲惨な事件を耳にするとそれを記憶し、事前に防ぐことに精を出す。おそらく、数えきれないほど転生していると思います。9.11を防ぐことはできなかったが、7.12を止めることには成功したそうですw
ギデオンがラヴィと格闘した際、全ての行動を読んでいたことから、ルーシーがソーシャルワーカーになる世界を経験するのも初めてではないことが分かる。
ギデオンが決まってルーシーに問う「君の人生で最悪な出来事は?」という質問。これは、母シルビアの自殺を思い出させ、”人生の仕組み”に気づかせるためのもの。
これだけ聞くと万能な力のように思えますが、そんなことはないと思います。次の人生に受け継がれるのは”記憶”だけなので、全てを暗記する必要があります。また、新しい人生では、全く同じ出来事を何十年も経験することになります。それには、かなり強靭な精神力が求められると思います。
感情のない息子アイザック
ルーシーの息子アイザックは、ギデオンよりもさらに特異体質。
ルーシーは元々、髭を生やしたラヴィと結婚するはず。しかし、
- 母シルビアが生存→ルーシーが刑事にならない→マイクと結婚→アイザック誕生
という流れに変わった。つまり、アイザックは生まれるはずのなかった存在で、生まれつき、別の世界線に存在する人や物が見える体質だった。ギデオンが言うには、アイザックには魂が無く、無から無へと帰るだけの存在だそう。
シルビアやエブリンは、前世と繋がることが出来るが、アイザックはさらに特異で、別の世界に移動することも可能(意図的ではない)。
<アイザック誘拐事件>の真相は、別の世界に移動していただけ。その世界ではウォレン一家に通報され、迎えに来たのが刑事になったルーシーとラヴィ。ルーシーは当然、アイザックを知らない。アイザックがルーシーと再会した時に泣いた理由を「僕のことを知っていたから」と言ったのは、自分を知る母親に会えたから。また、自分を連れて行った人物を聞かれて、ラヴィを指差した理由もこれ。推測ですが、捜査を最優先するために、例の廃墟までアイザックも連れて行ったのでしょうか?
その状態から、アイザックは何かしらの方法で元の世界に戻って来れた。そして、別の世界と繋がれるシルビアにはアイザックの足取りが見え、発見できた?
金色のボタン
シルビアが持っている金色のボタンは、ギデオンが落としていったもの。
- 金のボタンがある→ギデオンが自殺を止めた→シルビアが生存した世界
ということが確信できる。
シルビアはこのボタンを確認することで、現実だと確信でき安心していた。
青の腕時計
ギデオンが書いた調査資料に、アイザックの青い腕時計の絵があり、最終的には監禁場所と思われた廃墟の中から見つかった。
ギデオンは腕時計が何らかの”確証”だと言っていましたが、これが何を示していたものなのか、私にはよく分かりませんでした。
腕時計の所在の流れは、
- ギデオンが時計を見つける→ベッドに投げる→アイザックが腕に着ける→別の世界へ持って行く→時計が失くなっていることにルーシーが気づく→廃墟で発見
別の世界に持って行った時計が、なぜ元の世界にあったのか謎です。
もしアイザックが持って帰ってきたとしても、腕に着けたままだと思うのですが…
エブリンとジョナ
ギデオンが初めて人助けをしたと思われるのが、エブリンという少女。彼女は、車のタイヤがパンクして死ぬはずだったが、ギデオンが事前にパンクさせることで阻止。
死ぬはずの人生から逸れた影響で、別の世界の住人が見え始め、精神を病む。その後ギデオンの計らいで、誰も暮らしたことがないような人里離れた家に隠れ住む。
数年後ギデオンは、両親から殺されるはずだったジョナ・テイラーを誘拐し、エブリンの家で匿う。エブリンの家が警察に見つからないことは、前世で経験済み。
シーズン2で、この2人の様子が描かれるのかも気になります。
続編の制作決定
一応、本作の核となる設定は最終回で明らかになった。しかし、それに気づいているのはギデオンだけで、ルーシーは未だに気づいてない。今後、この仕組みに気づくのか楽しみです。
シーズン2は、2023年2月6日にロンドンで撮影が開始され、およそ5ヶ月で終える予定。早くて、2024年の夏か秋にリリースされる可能性が。また、シーズン3も制作する方向で動いている。
シーズン2は、シーズン1の前日譚と続編の両方の役割を果たすような構成になるそう。シーズン1を観た人からすると、このような構成になることに納得できると思います。
内容は、連続殺人犯ギデオンの捜索に、またもやルーシーが予想外の形で巻き込まれる。また、ギデオンの真の目的が明らかになり、掴みどころのない悪の力を阻止するためにルーシーを仲間にしようとするというもの。