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映画についての素人の戯言

【ホラー作品初のIMAX】田舎町を襲った”最悪の奇跡”『NOPE/ノープ』

作品情報

『NOPE/ノープ』(原題:Nope)

公開 2022年
上映時間 130分
監督、脚本 ジョーダン・ピール
出演 ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、スティーヴン・ユァン、 ブランドン・ペレア
評価 第47回サターン賞で7部門にノミネートされ、SF映画を受賞。

あらすじ

田舎町で広大な敷地の牧場を経営し、生計を立てているヘイウッド家。

ある日、空から異物が降り注ぎ、偶然にも父親に直撃し死んでしまう。
長男のOJは、この事故の直前に一瞬目にした飛行物体を忘れられずにいた。

兄妹は、牧場の立て直しを計るために、謎の飛行物体を収めた“バズり動画”を世に放とうと撮影に挑むが、想像を絶する事態が待ち受けていた—

感想

不穏な始まり方が最高です。
ただ個人的には、ジョーダン・ピールの作品を見ようと思う人が求めてるのは、これじゃない感…。

監督らしい風刺が今作にもありました。
ほとんどの人が知らない、映画の歴史は黒人から始まったという事実。

動物の逆襲、見世物としての搾取。
動物とは目を合わせるなw

AKIRA』実写版の監督を断るほどのガチファンによるオマージュも。

雑記

監督のホラー作品に間違いなし

ジョーダン・ピールといえば、『ゲット・アウト』でアカデミー脚本賞を受賞し、次作『アス』も絶賛された。

彼が製作に関わっている『ナチ・ハンターズ』というドラマもオススメです。

監督は日本アニメのファン

実写版『AKIRA』の監督オファーを断るほど、ガチファンのジョーダン・ピール。本作ではオマージュとして、バイクドリフトや、飲み込まれた人々が体内で押しつぶされる描写(カオリの生々しい死を反映)が入っている。

登場する”あれ”の造形は、『新世紀エヴァンゲリオン』の使徒から影響を受けたそう。

『ゴーディ 家に帰る』の必要性

ネタバレを読む

他の方のレビューを見ると、

「ゴーディが暴れたシーンの必要性が分からない」

という意見がちらほらありました。個人的に感じた、このシーンの必要性について考えました。それは、「動物(あるいは他者)を飼いならすことはできない」ということを強調するためだったと感じました。

このシーンでは、チンパンジーのゴーディが突然暴れ出し、出演者たちを殴り殺していきます。最後に残ったジュープは、偶然なのか、幻覚なのか、ピンと自立した靴を見ていたので、ゴーディと目を合わせませんでした。このおかげで、襲われずに済んだのです。

ジュープは、子役時代に経験したこの惨事を武勇伝のように話し、利益のために悪用しています。同様に、馬を囮に使って”あれ”を呼び出し、ショーの目玉として飼いならそうともしていました。
ジュープは、自分だけ襲われずに生き残った経験から、いかなるものも飼いならすことができるという、誤った思い込みをしていたのです。

これらを説明するために、あのシーンがあったのだと思います。

実際に起こった事件

作中で、『ゴーディ 家に帰る』というホームコメディに出演したチンパンジーが、キャストを殴り殺してしまう事件について言及されているが、似たような事件が実際にも起きている。

2009年、アメリカでタレント活動をしていた”トラヴィスというチンパンジーが突然暴れ出し、飼い主の友人女性を襲い、顔面をずたずたに引き裂くという惨事が起きた。その後トラヴィスは、警官に射殺され死亡した。

生後からずっと人間と一緒に暮らし、人間社会に適応していたはずだったチンパンジーの凶行に激震が走った。被害者の顔の傷を見た救命医が、カウンセリングを余儀なくされるほど、その損傷は酷かった。