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映画についての素人の戯言

【謎の存在の正体は】妄信、多数派の怖さを描く『真夜中のミサ』

作品情報

『真夜中のミサ』(原題:Midnight Mass)

公開 2021年
シーズン数 1
エピソード数 65分×7話
製作総指揮 マイク・フラナガン
監督 マイク・フラナガン
脚本 マイク・フラナガン
出演 ケイト・シーゲル、ザック・ギルフォード、ハミッシュ・リンクレイター、ヘンリー・トーマス、クリスティン・レーマン、サマンサ・スローヤン、ラフル・コーリ、アナベス・ギッシュ、アレックス・エッソー、マイケル・トルッコ他
音楽 ザ・ニュートン・ブラザーズ
配給 Netflix
評価 第27回クリティクス・チョイス・アワードで最優秀リミテッドシリーズなど3部門にノミネート。
第2回クリティクス・チョイス・スーパー・アワードで最多となる6部門にノミネート、ホラー部門の最優秀男優賞(ハミッシュ・リンクレイター)を受賞。

あらすじ

飲酒運転で人を殺し、4年間服役していた青年が、人生の再出発を願って故郷のクロケット島に戻る。
同じ頃、謎めいた若き神父が起こす、信じられない奇跡や不気味な怪事件。

神父を妄信し始めた人々と寂れ果てた町に訪れるのは、真の救済か、それとも—

感想

好みが分かれそうな内容でした。話がかなりゆっくり進むので、それに乗れるかどうかが人によると思います。個人的には、気味悪くも神秘的な内容に引き込まれました。

寝る時に見える女性は、『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』を思い出しました。
この幻覚のおかげで、島は救われたのかなと思いました。

“あれ”が天使に見えるほど、自分に都合よく解釈してしまう、妄信の怖さ。
アルコール中毒とブラッド中毒。多数派の怖さ。

見どころ

神秘的なストーリーと景色

主人公の故郷である孤島の景色が、穏やかで幻想的で惹き込まれます。室内の明かりのコントラストも綺麗でした。

怪しすぎる神父

島で唯一の神父であるポールを、島民は彼を盲目的に信じており、少しおかしな行動や不気味な発言をしただけでは、疑うことはしません。

視聴者からすると、早くこの神父を追及してくれ!という気持ちでずっと観てしまいます。

監督の自伝的な作品

監督のマイク・フラナガンは、『真夜中のミサ』はずっと作りたいと思っていた作品だと、いくつかのインタビューで述べたり、Twitterに投稿したりしています。

彼は、本作を「情熱的で、極めて個人的なプロジェクトであり、カトリック教会で育った生い立ちと、最終的に断酒と無神論に至った自身の経験を扱った作品だ」とも語っています。

”あれ”の正体は?

作中では、島民が天使だと思い込んでいる謎の生き物が登場します(視聴者目線では、全くそうは見えない)。その正体が本当に天使なのか、それとも、悪魔あるいは吸血鬼なのか、それを考えながら観るのも面白いです。

雑記

特徴的なホラー作品

マイク・フラナガン監督のホラー作品は、単純に怖がらせるだけではなく、そこに家族愛や人間ドラマを上手く溶け込ませています。

また、ジャンプスケア*1を滅多に使わないのにもかかわらず、しっかりと恐怖を感じさせる点でも優れている。

監督の次回作『アッシャー家の崩壊』も楽しみです!

あの巨匠の作品から思いついた?

第1話で、幼少期のライリーの寝室に、スティーヴン・キングの小説『呪われた町('Salem's Lot)』が本棚に置かれている。フラナガン監督は、キングのファンとしても有名で、彼の作品を脚色したこともある(『ジェラルドのゲーム』『ドクター・スリープ』)。また『呪われた町』は、知らぬ間に吸血鬼がはびこっている町を中心にし描かれており、明らかに本作との類似点が伺える。

部屋には他にも『ダーク・タワー』シリーズ4巻「魔道師と水晶球」もある。このシリーズは、キングの作品の中でも中心となるような作品で、様々な作品とクロスオーバーしている。『呪われた町』とも大きく関わっており、その中では吸血鬼を狩る神父が登場する。

これらのことから、本作執筆時のフラナガンがキングの作品からインスピレーションを受けているのは明らか。

”あれ”のモチーフ

作中で出てくる”あれ”は、吸血鬼の悪魔の一種である”Alukah”の特徴と似ている。第3話「第3章:箴言」では、初めてAlukahについて言及される。さらに、実際の箴言30章15節でも言及されている(ここではひるとして)。

もう1つの可能性は、ウェンディゴというインディアンに伝わる精霊。人間の特徴を持つ生き物として描かれ、飽くなき欲求や飢え、人肉を食す衝動を呼び起こすことで知られる。場合によっては、人の声を真似て人間を騙す描写もあり、第2話の最後の場面でもその姿が見られる。

ハリウッド映画では、角を持つ人間と獣のハイブリッドウェンディゴ」と呼ぶことが多いが、そのような特徴は原住民の言い伝えには登場しない。このタイプは、ドラマハンニバルに登場する。

リーザが最後に言う「足の感覚が無い」というセリフは、彼女が「贈り物(奇跡)」を失ったこと、つまり、悪魔が死んだことが示唆されている。

*1:観客を驚かせ恐がらせるために、大きな恐ろしい音と共に映像を突然変化させる手法