作品情報
SKIN/スキン(原題:Skin)
公開 | 2018年 |
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上映時間 | 118分 |
監督、脚本 | ガイ・ナティヴ |
出演 | ジェイミー・ベル、ヴェラ・ファーミガ、ダニエル・マクドナルド、マイク・コルター他 |
配給 | A24 |
評価 | 前身となる短編映画『Skin』が第91回アカデミー賞で短編映画賞を受賞。 本作は第43回トロント国際映画祭でFIPRESCI賞(国際映画批評家連盟賞)を受賞。 |
あらすじ
スキンヘッドに差別主義者を象徴する無数のタトゥー。幼い頃に両親に捨てられ、白人至上主義者に育てられ、憎悪と暴力に満ちた生活を送っていたブライオン。ある日、シングルマザーのジュリーと出会い、これまでの自分の悪行を悔い、新たな人生を始めようと決意する。
しかし、脱会を許さないかつての同志たちから執拗な脅迫、暴力を受けることとなり、ジュリーたちにもその矛先は向き始める―
感想
本作は、2003年に米国で発足したスキンヘッド集団「ヴィンランダーズ」の共同創設者、ブライオン・ワイドナーの実話を基とする物語です。
短編では、白人至上主義の親に育てられた子供も同じ考え方になってしまうという悲劇を描いていますが、長編では、その連鎖から抜け出せるのか、というテーマになっています。
本当の自分を隠すために、無数に掘られた顔のタトゥー。
映画ラストの主人公の表情には、なんとも言えない気持ちにさせられます。
差別被害者である黒人が、レイシズム団体を抜けようとする白人の手助けをする凄さ、懐の深さには感服します。
雑記
ユダヤ人監督
本作の監督ガイ・ナティヴはイスラエル出身のユダヤ人で、彼の祖父母はホロコーストの生存者。
彼は、ブライオン・ワイドナーを追ったドキュメンタリー『Erasing Hate』を観て、この実話に関心を抱く。ところが、当時はオバマ政権。過激な白人至上主義団体と言われてもピンとこないと言われ、賛同する映画会社は現れなかった。最も追い風になったのは、「ドナルド・トランプが大統領に当選したこと」だったそう。
そこで、長編製作の出資を得るべく、人種差別を題材にした21分の短編『SKIN』を全額自己資金で製作。これが大きな反響を呼び、企画立ち上げから7年を経て長編『SKIN/スキン』の製作が実現した。後に短編は、2019年のアカデミー賞で短編映画賞を受賞。
彼は、アメリカの問題をえぐる本作を、非アメリカ人が製作するという皮肉にも言及している。自身はイスラエル出身。主演のジェイミー・ベルはイギリス、シングルマザー役のダニエル・マクドナルドはオーストラリア出身。「外国人である我々にとって、外から見るアメリカの問題は見えやすい。」と語る。
衝撃の実話
本作は、2003年に米国で発足したスキンヘッド集団「ヴィンランダーズ」の共同創設者、ブライオン・ワイドナーの実話を基とする物語。
彼は実際に、計25回、16カ月に及ぶ過酷なタトゥー除去手術に挑み、心身共に生まれ変わろうと奮闘した。その痛みは想像を絶すると思います。
ヘイトから抜け出したブライオンと、それを手助けした黒人のダリル・L・ジェンキンスは、今も良き友だそう。
主演の役作り
主演のジェイミー・ベルは、憎しみに満ちた男を演じることを一度拒んだ。
オファーを受け入れた決め手のひとつは、ブライオン改心のきっかけとなるシングルマザー役をダニエル・マクドナルドが演じるということ。彼女は、短編版にもレイシストの妻として出演しており、注目の若手の1人。
この役に魅了されたジェイミーは、短期間で9㎏も体重を増やし役に臨んだ。また、ブライオン本人に会いに行ったり、彼が属していたグループの追跡をするなど独自に研究を行ったりもした。監督のナティヴは撮影初日、スキンヘッドになり、タトゥーなどのメイクを終え、本物のブライオンと化したジェイミーを見て悪寒を感じたほどだったそう。