映画好きのドグマ

映画についての素人の戯言

【集団心理の怖さ】女児のウソによって周囲が一変『偽りなき者』

作品情報

『偽りなき者』(原題:Jagten)※”狩り”の意

公開 2012年
上映時間 115分
監督 トマス・ヴィンターベア
脚本 トマス・ヴィンターベア、トビアス・リンホルム
出演 マッツ・ミケルセン、スーセ・ウォルド、トマス・ボー・ラーセン他
評価 第65回カンヌ国際映画祭男優賞マッツ・ミケルセン)を受賞。デンマーク語作品がコンペティション部門に選出されるのは、1998年以来。
第66回英国アカデミー賞非英語作品賞にノミネート。
第71回ゴールデングローブ賞外国語映画賞にノミネート。
第31回ロバート賞(デンマークアカデミー賞)で、作品賞監督賞主演男優賞など7部門を受賞。
第86回アカデミー賞外国語映画賞にノミネート。

あらすじ

離婚をし孤独な生活を送る教師のルーカスは、以前の勤め先が廃校になり、幼稚園の教諭として再就職する。そんな中、息子と一緒に暮らすことが決まり、人生は良い方向に向き始めていた。

しかし、女児の1つの嘘によって、彼の人生は一瞬にして崩れ落ちていく―

感想

本作は、”嘘”と”集団心理”の怖さに焦点を当てています。
めちゃくちゃ胸糞なので、苦手な方はご注意を。

周りの大人は何をしてんだと思いますが、突然子供がこんなことを言い出したら、確かに無視はできないな、と。難しい...

お人好しな印象だったルーカスですが、とても強い人だということが分かってきます。
周りの嫌がらせが、完全に犯罪レベル。

1度レッテルを貼られてしまうと、消すことは出来ないのか?
終わり方が凄まじい。

雑記

世界で評価されるデンマーク人監督

本作の監督トマス・ヴィンターベアは、世界で有名なデンマーク人監督の1人。
個人的に、一番有名なのはラース・フォン・トリアーだと思います。

彼らは、ドグマ95という前衛的な映画製作運動を起こしたことで知られる。

ヴィンターベアの2作目『セレブレーション』は、初めて”ドグマ95”に則った作品であり、第51回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞したことで、この運動が国際的に知られるようになった。

また、2020年公開の映画『アナザーラウンド』は、第93回アカデミー賞監督賞にノミネートされ、国際長編映画を受賞した。

ドグマ95”とは?

ラース・フォン・トリアーとトマス・ヴィンターベアによって起こされたミニマリズム的な撮影原則を提唱する運動で、これには「純潔の誓い」と呼ばれる10個のルールが存在する。
1998年に始まり、この運動が終わる2005年までに合計35本の映画が制作された。

彼らの考えは、「映画製作者が、ストーリーと演技だけに集中することで、観客は、過剰な演出によって疎外されたり、気を取られたりすることが無くなり、より観客を惹きつけることができる」というもの。

と言っても、トリアーの作品で完全にドグマ95に則って作られたのは『イディオッツ』だけですがw

この運動は2005年に解散したが、ブリランテ・メンドーサの『どん底』『サービス』『ローサは密告された』など、”ドグマ95”のルールを使った、あるいは影響を受けた映画が作られ続けている。

究極の別エンディング

ネタバレを読む

映画版では、ルーカス(マッツ・ミケルセン)が森の中を歩いていると発砲音が鳴り響き、そのままエンドクレジットが流れる。

しかし、Blu-ray/DVD版には別エンディングが収録されていて、実際にはルーカスが村人に撃たれ、森の中で放置されたまま死亡するというもの。

いやぁ、この監督は容赦ない!!
さすが、ドグマ95という無駄を極限に減らすような厳格なルールを自らに課すだけあります。
個人的には、映画版でもこのエンディングを採用しても良かったのでは、と思います。